しろくまハウス10号

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今日の「あかね」と「やよい」♪

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まだ着陸していないよ♪

 マリアママ、ガブリエルちゃん、アンナリアちゃん、アレンドゥスちゃん、よろぴくね♪

着陸したら、みんなに知らせるよ~♪


【 取材etcの連絡先 】
  〒012‐0106
  秋田県湯沢市三梨町字清水小屋14
  リトル・ペブルの「清水小屋」共同体
  ジャン・マリー杉浦洋 神父
  Father Jean-Marie of the Risen Son of God
  TEL/FAX: 0183-42-2762
  Eメール:charbeljapan@nifty.ne.jp
  URL : http://homepage1.nifty.com/charbeljapan/
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by clara_1004 | 2008-11-30 14:54

「33年」(32)感謝の説教

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石見銀山に帰ってからも、皆の思いは、強烈に殉教者たちにひきよせられたままだ。銀山中に、シストとカタリナと、林の親分とおかみが、殉教者たちに会ってきた話しをしてきた、と知れわたり、皆がその話しを聞きたがる。本物のなかの本物、神に次いで最も崇高な存在に出会った衝撃からさめやらないまま、シストたちは皆にこわれるままに話し、思い出しては泣く。彼らの話しは、改心したばかりのつち親、ほり子、やま師たちの信仰を固め、熱心の炎をますます燃えたたせて、はかりしれない影響を及ぼす。

 3人の男の子たちの話を聞いて泣かぬものはおらず、特にすばらしい模範となっている。そんな小さな子どもたちは、いったいどうやって最期をとげたのだろう。知りたいものだ。皆が、同じのぞみを抱いている。そして、六左衛門が、とうとうそれを知らせにやってきてくれた。12才のルドビコ茨木と13才のアントニオは、一緒に神をほめたたえる歌をうたいつつ、やりのほさきを胸に受けた。

 パウロ三木は、「自分は最も弱いものだから、まっさきにこのように死なしてくださる、その神に感謝する。」と最期に、感謝の説教を十字架上で行なったと、六左衛門が目撃談を語ってくれた。彼らは、本当に感謝しながら、賛美しながら、大喜びで死んだのだ。

 これを六左衛門から聞いた時、シストもカタリナも、林の親分もおかみも、まったく不思議な体験をした。何と、心に賛美と感謝が突然、もうれつに湧きあがってきたのだ。


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2008年9月20日 UP
著者 ミッシェル・マリー・フランソワ奥田力
(C) 箱舟の聖母社


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by clara_1004 | 2008-11-30 14:10

メールマガジン「箱舟の聖母」

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バックナンバーNo.348~350 を公開しました。

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by clara_1004 | 2008-11-30 01:03

「33年」(31)日本人ほどあわれな国民はいない

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パウロ茨木
「愛する兄弟。高麗から連行されてきたなら、ひどいめにあったでしょう。つらいめにあったでしょう。でも、憎しみではなく愛ですよ。うらみではなく、ゆるしですよ。怒りではなく、柔和ですよ。さばきやのろいではなく、祝福と祈りですよ。」

シストとカタリナは、うなづきながら聞いている。言葉を耳と心にきざみつけようと必死になって、そして姿と顔を目に焼きつけようと見つめている。あふれでる涙にじゃまされながらも、人間は不条理で残酷な強烈な体験によって、まっぷたつに分かれる。無理やり選ばされるといってもよい。憎むか、愛するか。うらむか、ゆるすか。怒るか、柔和にふるまうか。さばき、のろうか、祝福し、祈るか。中間のない両極へと分かれていくのだ。シストとカタリナ、林の親分とおかみ、そして六左衛門にとって、まさに今、神からの問いかけがなされている。そして、殉教者たちの姿は、その言葉よりもはるかに強く、愛とゆるしと柔和と祝福と祈りを選ぶことを呼びかけてくるのだ。

パウロ茨木(いばらぎ)の弟のレオン烏丸(からすまる)は、日本人のライ病者の世話に身をささげてきた説教師だ。今、彼は、高麗の言葉での最後の説教を、シストとカタリナにしてあげようと口を開く。

レオン烏丸
「愛する兄弟。同じ祖国を愛し、同じ神を愛する兄弟よ、神との一致を目指しなさい。それは、あわれな人間ほど、なおさらあわれむということです。私は、イスパニアのパードレや修道士と、この国のライ病者の世話をして、よくわかりました。日本人ほど、魂がくらやみにとざされているあわれな国民はいないと。
 日本人は、みんながやるからやる。みんなが、やらないからやらない。このような生き方に、がんじがらめにしばられています。目の前に、どれほどかわいそうなライ病患者が苦しんでいても、みんながほっとくからほっとく、みんなが逃げるから逃げる。そうして良心も痛まない、かわいそうな国民です。
 正しいことを正しいからという理由で行う。正しくないことを正しくないからという理由で行わない。もしこの国民にこれができるなら、私達の祖国を侵略することもなく、自分の同国民を、ライ病者だからといって、のたれ死にするままにほっておくこともないでしょうに。
 神は、私たちをあわれんで下さいました。こうして、キリシタンになれたのですから。最もあわれな目にあった私たちを、神があわれんで下さったのですから、その神とともに、魂において最もあわれなこの国の人々をあわれみましょう。愛する兄弟、これが、私たち三人のあなたたちへの遺言です。さよなら、天国であいましょう。」

とうとうカタリナが泣きくずれてしまった。しゃがみこんだお母さんが、全身をふるわせておえつして泣くので、ルイスぼうやも、ワンワンと泣き出す。シストは、片手でルイスぼうやをだきあげ、片手でカタリナの背中をさする。六左衛門と林の親分とおかみが、シストたちを見つけてやってきて、皆そろった時、全員が泣きはらした目をしていた。六左衛門は、殉教者たちの最期をみとどけるために、長崎に向かい、あとの皆は、石見銀山への帰途についた。


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2008年9月20日 UP
著者 ミッシェル・マリー・フランソワ奥田力
(C) 箱舟の聖母社


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by clara_1004 | 2008-11-30 00:07

「33年」(30)おじさん。おばさん。なかないで。

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シストとカタリナの心は、たちまち、うめきはじめた。カタリナは、こみあげてくるおえつに口に片手をあてる。なぐさめと、はげましの言葉なんて何も頭にうかんでこない。泣きながらシストが声をしぼりだす。

シスト
「ぼくたちも高麗から連行されてきたんだよ。ぼくたちもキリシタンなんだよ。」

カタリナは、泣きくずれそうになってきた。

カタリナ
「ぼうや。神様。助けて……」

ルドビコが、むじゃきに明るく答える。

ルドビコ
「おじさん。おばさん。泣かないで。ぼくは、もうすぐ神様に会えるんだから。しあわせなんだよ。ぼくたち十字架につけられて、両がわから槍でつきさされて殺されるんだって。ぼくは、神様をほめたたえながら死ぬってきめているの。」

パウロ茨木
「それと、神に感謝しながら、だね。」

父親らしくパウロ茨木が口をはさむ。

ルドビコ
「うん。神様にありがとうをくりかえしながらね。」

パウロ茨木
「そうだよ。神に賛美と感謝をささげつつ槍を受けるんだよ。」

パウロ茨木は、よろこびを満面にたたえて息子と話している。かわいい声で息子が答える。ニコニコしながらうれしそうに。

ルドビコ
「大丈夫だよ、お父さん。だって、ぼく、頭の中で何度もなんども練習してるんだもん。」



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2008年9月20日 UP
著者 ミッシェル・マリー・フランソワ奥田力
(C) 箱舟の聖母社


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by clara_1004 | 2008-11-29 17:42

「33年」(29)ルドビコ茨木に会う

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シストとカタリナとルイス坊や。六左衛門と林の親分とおかみは間にあった。1月19日、彼らは、尾道で殉教者たちに会えたのだ。真冬なのに一重の着物。そして、はだしである。はだしの足は、はれあがり出血している。着物は大量の血によごれている。左耳がそがれて、そこからの出血だ。

六左衛門は、イエズス会の三人の仲間にかけよっていく。パウロ三木、ヨハネ五島、ディエゴ喜斎だ。子どもが3人で歩いている。

一番ちっちゃい子にシストとカタリナが、高麗の言葉で呼びかける。ルドビコ茨木だ。ルドビコが、うれしそうに呼ぶ。

ルドビコ 
「お父さん、おじさん、高麗の人たちだよ。」

林の親分は、中国人の男の子、アントニオが、呼びかけた中国語に答えたので、その子と話しはじめている。この区間は、さいわいなことに役人の頭が、話しをするのを見のがしてくれている。

ルドビコに呼ばれて、彼の父のパウロ茨木とおじのレオ烏丸が高麗の言葉で答える。たちどまることはできない。


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2008年6月4日 UP
著者 ミッシェル・マリー・フランソワ奥田力
(C) 箱舟の聖母社

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by clara_1004 | 2008-11-29 17:31

「33年」(28)26聖人のこと

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1597年になった。六左衛門がやってきた。いつもと様子がちがう。何かあったらしい。精錬部門で、指導中のシストのところまでやってきて、シストを呼ぶ。

六左衛門 
「シスト。一大事だ。京で、パードレや修道士や信者が24人つかまって、長崎ではりつけにされるために今、瀬戸内海にそって歩かされている。君の国の人が3人いるんだ。君たちのあとから、高麗から連行されてきたんだよ。今から尾道に向かえば、間に合って彼らに会える。カタリナは、林の親分のところへ行かせたから、そこへすぐに行こう。24人の中には、中国人が、お父さんの男の子が一人いるんだ。」

シストは、これを聞いた瞬間、頭に血がのぼるような感じがした。同朋が、しかも同じように連行されて、つれてこられたキリシタンが殉教しようとしているのだ。すぐ弟子たちにあとをまかせて、六左衛門といっしょに林の親分の家へ向かった。

林の親分は、林のおかみが呼びに行っている。親分の家につくと、3才のルイスをだいてカタリナが待っていた。カタリナは、シストを見ると泣き出してしまった。六左衛門が、ちっちゃいルイスをすぐにだきとり、シストが何も言わずにカタリナをハッグする。二人とも何を言っていいのかわからない。

シスト 
「大丈夫かい。」

カタリナ
「シスト。シスト。シスト・・・。ひどい・・・。」

シスト 
「ひどい。本当にひどい。」

二人には同じ連行の体験がある。家族も、友も、祖国も、奪われた悲しみがよみがえる。もしかして今、殺されようとしている3人は、祖国で家族や友を殺されたかもしれない。彼らも、死の恐怖を味わったかもしれない。少なくとも荒廃した祖国と、多くの同朋の死をまのあたりにしている。そして、なわめのはずかしめと連行の旅の苦しみをなめている。そして、最後には異国の地でひきまわし、はりつけ、ごうもんを受けるのだ。この3人が、他の殉教者たちとは、まったくちがう5年間をすごしてきたことが、シストとカタリナにはわかるのだ。だから会いたい。会ってたった一言でもはげましの言葉をかけたい。祖国、高麗の言葉で。

林の親分とおかみがはいってきた。親分は、ルイス坊やをだいている六左衛門に、がなる。

林の親分 
「中国人がいるのか。男の子なのか。」

びっくりしたルイス坊やが、泣きだしたので、今度は、林のおかみが六左衛門からだきとる。

六左衛門 
「うん。男の子が3人いて、一人が、お父さんが中国人でお母さんが日本人。もう一人が高麗人。あと一人が日本人だ。」

カタリナが、悲鳴をあげた。

カタリナ 
「えー。高麗の3人のうち一人は、男の子なの。」

六左衛門 
「そうだよ。3人のうち、一番ちっちゃい子が、高麗人だそうだ。」

林の親分 
「おまえ、すぐ仕たくにとっかかれ。冬の山ごえだ。おれは、馬を手配してくらあ。」

大わらわの旅仕たくがはじまった。時間のゆとりは無い。


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2008年6月3日 UP
著者 ミッシェル・マリー・フランソワ奥田力
(C) 箱舟の聖母社


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by clara_1004 | 2008-11-29 14:29

「33年」(27)祖国のために

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石見銀山の外でのうれしい誤算というのは、シストのつくった高麗式の炉の大成功によってはじまった。精錬部門の人々は「すごい。」と言葉を失った。そして、すごい、すごい、といううわさは、鉱山中にたちまち広まった。

毛利氏の役人が、そのすごさに狂喜した。そして、シストを他の鉱山にも高麗式の炉をつくらせ指導させるために、次から次へと毛利氏支配の鉱山に派遣することにきめた。

もちろん大がかりな炉の建設には、長期の滞在が必要だ。そして、手伝いのための精錬部門の弟子たちを伴わなければならない。

シストは、派遣されるたびに、弟子たちの中に同宿や伝道士を混ぜて伴った。まるで、キリシタンの教理の集中講義に行くようなものだ。日中は、炉をつくり、指導し、夜は例のシスト塾だ。シストの大車輪の活躍が続けられ、高麗式の炉もキリシタンの教えも毛利氏支配の他鉱山にどんどん広まっていった。そして、そこでも大将として、指揮官として、日本国中の鉱山をネットワークする地下教会を完成させるための戦略を、新しくキリシタンになったつち親や、やま師、ほり子たちにさずけていった。

シストの、最初の計画は、小規模で長い時間を要しての地下教会づくりであったが、まるで高麗式炉のように大規模高能率で地下教会づくりがすすんでいったのだ。しかも何の妨害もうけず、やりたいほうだいできた。

シストは若い。1594年、24才で日本の鉱山での地下教会づくりをはじめた彼は、25才、26才、と昼は精錬の、夜はキリシタンの教えの指導を続ける。

体力の限界をこえて働きつづける彼は、意志の強固な力によって自分の体をささえているのだ。その彼の意志力をささえているのは、六左衛門がくるたびにもたらしてくれる祖国、高麗の情報だ。

六左衛門は、キリシタン武士たちからも、連行されてくる高麗人捕虜たちからも、両方から情報を得てきて、シストの家でシストとカタリナに話してくれるのだ。

シストとカタリナの頭と心にはいつも祖国が生きている。じゅうりんされている祖国とともに二人はいつも苦しんでいるのだ。六左衛門がもたらしてくれるのは、高麗の庶民や農民が、義兵となって秀吉の侵略軍に対して抵抗しているありさまだ。

シスト 
「ああ、ぼくの祖国。ああ、ぼくの高麗。戦い続けているんだ。戦い続けてくれ。勝ってくれ。」

シストもカタリナも胸がしめつけられるように苦しくなる。毎回毎回、聞くたびにそうなる。そして、「ぼくも戦いつづけよう」と祖国の敵、神の国の敵、秀吉に対して、祖国と共に、祖国の義兵とともに戦っている意識を強めて、体にむちうって、明日からもますます働こうと決意を固める。


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2008年5月26日 UP
著者 ミッシェル・マリー・フランソワ奥田力
(C) 箱舟の聖母社


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by clara_1004 | 2008-11-29 12:44

「33年」(26)スケールアップ

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 石見銀山の中心的つち親の、林太郎右衛門(はやしたろううえもん)と、その一家が全員そろってキリシタンになったという話しは、たちまち知れわたり、はかりしれない影響をみなに、特に、つち親たちに及ぼした。
 どこへ行っても、よるとさわるとこの話しだ。林一家の皆も、自分の新たなよろこび、希望、生きがいについて黙ってなんていられない。
 真理や、救いをさがしていたものは皆、彼らの話しによろこんで、そしてまじめに耳をかたむけた。石見銀山全体に、キリシタンへの改心の波がおしよせた。世間では禁教令がしかれているが、ここではそんなのまったくおかまいなしだ。
 しかも世間では仏教の、または、神道の親類縁者、特に、父母兄弟が反対したりもする。しかし、ここのならずものたちは、そういうしがらみを、ここにくる以前からまったく断ち切っている。

 誰にも遠慮がなかった、ならずものたちだ。悪をなしているときも同様に、善をなすときも遠慮はない。また、彼らに干渉する関係者などここにいない。つち親でさえ、彼らがキリシタンになろうがいっこうにかまいやしないし、逆に自分がキリシタンになるときには、堀子全員にキリシタンになるよう命じてしまう。
 こうして一家あげての改心が、他のつち親のもとで連鎖反応のように次から次へと起こったのだ。シストは、今や大将のような存在だ。 
 他の一家にも林一家同様に教え、キリシタン地下教会を国中の鉱山に広げる戦略をさずけ、実行させる指揮官だ。

 六左衛門も、ひんぱんに、石見銀山を訪れ、教え、洗礼をさずけた。こうして、林一家だけで、スタートというシナリオは、多くのつち親と、その一家と合同でスタートということに、スケールアップしてしまったのだ。すなわち、キリシタンのつち親が、計画の何十倍ものスピードで誕生していきだしたのだ。もちろん、多くのやま師もキリシタンになっていった。


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2008年5月26日 UP
著者 ミッシェル・マリー・フランソワ奥田力
(C) 箱舟の聖母社


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by clara_1004 | 2008-11-28 23:31

「33年」(25)かためのさかずき

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 たしかに歴史は繰り返す。イエズスが福音を宣教した30数年後、キリスト教徒はローマ皇帝ネロによる大迫害にあった。わずかの男女からはじまった教会は、たった30数年でローマ皇帝をおそれさせるほどの数の信徒数に増えたのだ。

これと同じことが日本中の鉱山で、ならずものたちの世界でこれから起きるのだ。たった30年後、新しく第3代の将軍として徳川家光が就任し、日本中の鉱山への大迫害をはじめて実施した時、各藩はつち親とやま師のうち、はなはだ大勢の者がキリシタンであることに驚がくした。つち親や、やま師には、何年もの修行をつまなければなれない。特につち親は、鉱山でのあらゆる部門のあらゆる仕事のことがわかっていなければなれないのだ。それだけでは無い。子分であるつち子の面倒を見、まとめあげる力量と人格をも必要とする。つまり即席では絶対になれない。そういう彼らの大多数がキリシタンであることが調べによりわかった時、迫害者たちは何がどうしてこうなったのかさっぱり理解できず、うろたえるばかりであった。

プロ中のプロの彼ら、つち親ややま師がいなくなっては鉱山がなりたたない。院内銀山でもその時、国家老が江戸家老へ「院内銀山のキリシタンを残らずほばくしたら、山がすたれる」と報告している。しかし、キリスト教会の歴史はじまって以来の前代未聞の側面も、またある。

 日本の鉱山は、治外法権である。誰が国を支配し、どんな政治をし、どんな法律をつくろうが関係ない。自分たちの掟で自分たちで治めている。鉱山奉行とか上の役人たちが、支配する藩が変わったためにいれかわろうが、ただそれだけのことである。下に影響はない。

 つまり、日本の中に他の国があるようなものだ。ただし、その国はならずものの国といえる。そのならずものたちの間に、わずか30年の間に、爆発的にイエズスの教えが広まり、彼らが命を捨てるほどこの教えに忠実な本当の信仰者になったということは、前代未聞の出来事だ。

 また、そのならずもののキリシタンたちが後年、品行方正なキリシタンたちが迫害をのがれて逃げこむための受け皿をつくりあげたこと、これもまた、前代未聞のできごとだ。

 シストとカタリナがもたらした火が、なぜ、ならずものたちに、たやすく点火し、いきおいよく燃えさかり、そして急速に燃え広がったかは、林の親分とつち子達の思いがそれを良く説明する。

 彼らの思いは、すなわちすべてのつち親とすべてのつち子たち、共通の思いだからだ。つまり、イエズスは、彼らにとって、みりょくをたたえた神、そして親分であり、イエズスの教えは彼らのこの世とらい世の唯一の希望になったからなのだ。

 神が、ならずものたちをこれほど大規模に、そして重要な使命に用いる、こういうことが歴史上他にあっただろうか。

 いよいよ今日は、林一家全員に六左衛門が洗礼を授ける日だ。司祭でない六左衛門が行う洗礼は、水をひたいに3度かけながらラテン語で「誰それ、我、父と子と聖霊とのみ名によって、なんじを洗う。」というだけだが、男性にはシストが代父、女性にはカタリナが代母にならなければならない。そして、全員一人ひとりに、洗礼名が必要だ。六左衛門は、男女の人数分の紙に一枚ずつ、違う名前を書いてトランプのばばぬきのように皆にひかせることにした。すると、林の親分には、「ヨアキム」が、そして林のおかみには「マリア」が当たった。

 皆に洗礼名が決まって、いよいよ洗礼式だ。林の親分が、これでやってくれ、ともってきたのは、子分が親分のもとにわらじをぬいだ時、親分とかわす『かためのさかずき』のためのさかずきだ。これで、子分たちはみな、林の親分と親分、子分のちぎりを結んだのだ。そして、大きなひょうたん。水がいっぱい、いれられている。このひょうたんから水をさかずきに注ぎ、それでもって洗礼をさずけてくれというのだ。

 何とかわった洗礼式。でも笑ってはいけない。林の親分は生涯で最も厳しゅくな時と心得、今まで見たこともない真剣でいかめしい顔をしている。たぶん武士が切腹する時、こんな顔になるのだろうなと、それを見つめながら六左衛門は思っている。だから六左衛門も同じような顔でそのさかずきとひょうたんを受け取る。

林の親分が、林一家の全員に向かって大声をあげる。

林の親分 
「てめえら、いいか。今から受ける洗礼を、イエズス親分との『かためのさかずき』をかわすと思って死ぬ気で受けろい。わかったか。」

皆    
「おーーー。」

 こうして、彼らは、ありったけの決意と真剣さで洗礼をうけた。この林の親分のすばらしい思いつき、つまり、親分、子分の『かためのさかずき』の、さかずきと水を入れたひょうたんを用いての洗礼式は、今後、鉱山でつち親とつち子たちの一家あげての改心と洗礼の場合、六左衛門が常に用いる方式となった。

 林の親分が熟練の優秀な堀子を、特訓して一人づつ、一年に一人づつでもつち親にし、襲名(しゅうめい)させ・・・こうして年数をかければという計算は、石見銀山の中と、外で大いに狂った。しかも、うれしい誤算という形でだ。


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2008年5月23日 UP
著者 ミッシェル・マリー・フランソワ奥田力
(C) 箱舟の聖母社


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by clara_1004 | 2008-11-28 18:04

おめだじの知らねごどいっぺ書いである。白熊、ネコ…etcがリトル・ペブルの「ヨゼフパパファンクラブ」やってんだ。全部標準語だ。いがべ!
by clara_1004
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